今回紹介するのは和歌山県田辺市上秋津に位置する「奇絶峡」にて観賞する紅葉と一枚岩に刻まれている磨崖三尊大石仏です。
奇絶峡は田辺市を流れる右会津川上流に位置する渓谷で、東岸には標高605mの高尾山と西岸には549mの三星山(みつぼしやま)がそれぞれそびえ立ちます。
両岸が絶壁となって迫る渓谷は約2kmほど続くのですが、大小無数の奇岩が点在する見ごたえのある景観美を備えた渓谷です。
周辺一帯は田辺南部海岸県立自然公園の一部に指定されており、春は桜が咲き乱れ、夏は新緑が香り、秋の紅葉が鮮やかに色付く大人気の名所となっています。
奇絶峡の最大の見どころとなるのは、渓谷内の不動の滝より遥か上方にある一枚岩に刻まれる堂本画伯の原画となる「磨崖三尊大石仏」です。
渓谷沿いを併走する県道29号線上から山の斜面を見ると断崖に刻まれる磨崖三尊大石仏の姿をはっきりと見ることができるのですが、渓谷に入って山を登り進めることでより近くでその姿を観賞することができます。
今回は紅葉の名所としての姿と、最大の見どころとなる磨崖三尊大石仏を観賞したいと思います。
準備が整いましたら「奇絶峡」の散策スタートです。
奇絶峡【アクセス・駐車場】紅葉と断崖に刻まれた磨崖仏
今回は和歌山県田辺市上秋津にある紅葉の名所であり一枚岩の断崖に刻まれる磨崖三尊大石仏が有名な奇絶峡を訪れるため、車に乗り込みアクセルを踏み込みます。
暑い夏が終わって肌寒さを感じ始めると各地で色鮮やかに紅葉が色付き始めるのですが、自然と心が弾んで「今年はどこの名所を訪れようか!」と悩みます。
大きく分ければ「大人気で賑やかな紅葉スポット!」を好む方と「穴場でゆっくりと紅葉観賞を楽しみたい!」と言う方に分かれるかと思いますが、今回訪れた奇絶峡は後者の「ゆっくりと紅葉を観賞できるスポット!」ではないかと思います。
ゆっくり紅葉の観賞ができると言うことは「大した紅葉のスポットじゃないの?」と思われるでしょうが、正直なところ紅葉の名所には違いないのですが見渡す限りの景色を紅く染める紅葉とはなりません!
ごく一部のスポットは景観が良くて色とりどりの紅葉の景色を楽しめるのですが、思っている以上に範囲は狭くなっています。
従って紅葉を楽しみながら渓谷内にある名瀑の不動の滝や、断崖に刻まれる磨崖仏を同時に楽しむのが特徴的な穴場的な紅葉の名所となります。
まず初めに、奇絶峡への「アクセス」と「駐車場」に関して簡単に紹介しておきます。
奇絶峡へのアクセスはマイカーがお勧めです!
奇絶峡へのアクセスに関しては、基本的にはマイカーを利用するのがベストではないかと思いますが、公共交通機関を利用しても行くことはできます。
まず初めに、公共交通機関を利用する場合の最寄り駅となるのは「JR紀勢本線」の「紀伊田辺駅」となります。
「紀伊田辺駅」から奇絶峡までは7kmほどあるため、徒歩で向かうのは困難となります。
「龍神バス(龍神線)虎が峰経由季楽里龍神行」に乗ることになるのですが、あとは「奇絶峡」のバス停留所で下車すれば目の前が奇絶峡への出入口となります。
「紀伊田辺駅」から約20分で行くことができ下車してすぐ目の前が奇絶峡となりますので、楽と言えば楽なのですが問題点はバスの運行本数が1日4本しかないところです!
その点だけ気を付ければ、比較的簡単に訪れることができます。
続いては、マイカーを利用して向かう場合の最寄りの有料道路は「阪和自動車道」となり「南紀田辺IC」を降りることになります。
降りてすぐにある「田辺インター入口」の信号を左折して国道42号線に入ります。
「秋津町」の交差点を左折して県道29号線を経由しながら約5.6km走り進めるだけで奇絶峡まで行くことができます。
「南紀田辺IC」を降りてから7.3kmほどですので、約10分で行くことができます。
最後に駐車場に関してですが、奇絶峡へと入る出入口より道路を隔てた目の前に無料で利用できる駐車スペースがあります。
上記で紹介した駐車スペースの前後の車道沿いにも駐車スペースはあるのですが、メインの駐車スペースに関しては約10台ぐらい駐車できるかと思います。
メインの駐車スペースにはトイレが完備されていますので、ひと安心です!
メインの駐車スペースの手前100mあたりに約20台分のスペースがあり、メインの駐車スペースより先50mほどに5台分程のスペースがありますので、メイン駐車スペースが満車の場合にはどちらかに駐車すれば良いかと思います!
奇絶峡の紅葉は緑と赤のコラボレーション!
車を駐車して散策を開始するのですが、奇絶峡の紅葉に関しては渓谷全体が紅く色付いている訳ではありません。
渓谷内の一部分だけが紅葉している形となり、緑色と赤色とのコントラストを楽しむのが醍醐味となります。
奇絶峡の紅葉の見頃は例年11月中旬~下旬頃までが最盛期と言われるのですが、本日は11月24日ですが少し見頃を越えているように思います。
落葉している部分がかなりありますが、最盛期であっても紅葉しない緑の木々が圧倒的な割合を占めているように思います。
しかし、この緑と赤との色のコントラストが織りなす景色を好んで観賞に訪れる方もたくさんいますので、そういった点では最盛期には素晴らしい景色が広がるのではないかと思います。
注意点は、駐車スペースより県道29号線を渡って渓谷に入ることになるのですが、交通量は少な目ですが信号機がないことで猛スピードで車が行き過ぎますので十分に気を付けて出入口へと向かって下さい!
一枚岩の断崖に刻まれた磨崖三尊大石仏!
奇絶峡は見どころが点在する楽しいスポットなのですが、そんな中でも一枚岩の断崖に刻まれる「磨崖三尊大石仏」は特に有名で見ごたえ十分となります。
磨崖三尊大石仏は渓谷に入ってしまうと見えませんので、渓谷に入る前に観賞するほうが良いかと思います。
磨崖三尊大石仏の観賞ポイントは道路を渡って左手側(北方向)に30m~50mほど歩き進めるだけなのですが、そこから山の中腹の断崖を見上げるとかろうじて見えます。
少々距離があるうえに木々が生い茂っているので肉眼でははっきりと見ることはできませんが、一枚岩に刻まれている3体の磨崖仏は中尊に「阿弥陀如来」を配し、両脇侍に「観世菩薩」と「勢至菩薩」を従えた形となります。
左脇侍となる観音菩薩に関してはかろうじて見えるのですが、右脇侍となる勢至菩薩に関してはどこから見ても草木が邪魔して見えません!
今回は渓谷内にある登山道を登って磨崖三尊大石仏の近くまで行くつもりですので、詳しくはその時に紹介します。
近くまで行くつもりのない方は、この位置から観賞できる磨崖三尊大石仏をご堪能下さい!
磨崖三尊大石仏の周囲の景色を見ても分かるように紅葉感はゼロとなり、山のすべてが緑一色になることから紅葉する木々が無いことになります。
奇絶峡の見どころのひとつ「大人の足跡」
磨崖仏の観賞ポイントよりさらに100m先まで歩いたところにも、見どころのひとつとなる「大人(おおびと)の足跡」があります。
気が向いた方は行ってみてほしいのですが、100m足らずの軽い上り坂になっています。
歩き進めていると苔むした大岩が見えてくるのですが、歩いている間には何も見えません。
大岩を越えたところで振り返ると「大人の足跡」と呼ばれるくぼみが大岩に深々とあるのが確認できます。
「大人の足跡」には2つの説が伝わっているのですが、1つ目の伝説は、その昔大人(おおびと)が高尾山に腰を掛けて田辺湾で足を洗っている時に片足をこの岩にかけて踏ん張った時に付いた足跡であるといわれています。
2つ目の伝説は、ここより先の「龍神道」と呼ばれるところにも幼児の足跡があるのですが、その足跡は「稚児の足跡」と呼ばれています。
怪童が岩から岩へと飛んで遊んでいるときに奇絶峡に向かって飛んで下り立った時には大人になったと言い、そうして奇絶峡の岩に足跡がついたと言われるのですが、こちらの話には高尾山に腰かけて釣りをしている時に付いたものだとも言われています。
そんな伝説が残っている「大人の足跡」がありますので、お見逃しの無いように・・・
さらに50mほど歩き進めたところに休憩所があるのですが、ここでは目の前に広がる「巨石群」を観賞することができます。
ここに来るまでの渓谷には両側の崖面から転げ落ちたと思われる大小の岩が点在していましたが、休憩所の前あたりは無数の巨石が立ち並ぶ奇絶峡の特徴的な景観を創り出しています。
田辺領主であった安藤帯刀直次や紀伊候頼宣の石塔を立てるのにこの辺りの巨石が切り出されたことが有名となり、国学者などの来峡が奇絶峡の名の発祥となります。
しばらくの間は休憩所で巨石観賞をして、体力が回復したところで渓谷の出入口へと向かうようにして下さい。
滝見橋付近が素晴らしい景観を誇ります!
奇絶峡で唯一と言っても過言ではない紅葉が楽しめるポイントとなるのは、渓谷の出入口に架かる朱色の綺麗な滝見橋の周辺です。
和歌山県では紅葉と桜に関しての名所となる奇絶峡ですが、正直なところ紅葉を楽しめるのは後にも先にもこの場所だけです。
巨石や奇岩が点在する渓谷と朱色の綺麗な滝見橋さらには紅葉と緑の木々が織りなす色のコントラストですが、それだけで満足のいく絶景になるのはなぜなのでしょうか?
少なくとも「訪れて失敗した!」と考えることはなく、その狭い空間の中において少しでも絵になる場所を探したくなります。
そんなことを知ってか知らずか分かりませんが、たくさんの方が次から次へと訪れてきます。
奇絶峡の見どころのひとつ「不動の滝」
滝見橋を渡りきるとゆっくりと座って景色を楽しむための休憩所があるのですが、その奥には見どころのひとつとなる高尾山赤城谷を水源とした高さ約23mを誇る「赤城の滝」こと「不動の滝」と名の付く名瀑があります。
この辺り一体にはマイナスイオンが充満しており、リラックス空間が広がっています。
休憩所に置かれた石の椅子は不動の滝を観賞するために滝に向かって置かれていますが、流れ落ちる水滴の影響で苔むしていて座ることはできそうにもありません!
滝見橋を渡ったあともうひとつ不動の滝の前にも名も無き石橋が架かっていることで、景観は素晴らしいものとなります。
不動の滝は巨石の断崖で最上部にも大きな巨石が乗っかる形となるのですが、その巨石と巨石の間から一筋の白糸のように清水が流れ落ちてきます。
水量が少なく流れ落ちてくる水に勢いがないため滝壺の無い砂地となりますので、夏場でしたら小さなお子様の水遊び場になりそうな感じです。
不動の滝の中間あたりの右手側に建物が見えているのですが、2つ目の石橋を渡ったところより階段で登って行けるようになっています。
不動明王堂は巨石を利用したお堂です!
最上部にある「不動明王堂」までは100m足らずの道のりで簡単に行くことができます。
足元は石階段で滑りやすくなっているほか角度がありますので、慎重に登り進めてください。
不動明王堂までの間には「延命地蔵」をはじめ「妙見大菩薩」がお祀りされている小さなお堂がありますので、横目に見ながらお進みください。
不動明王堂の手前には「不動明王」の大きな石像が鎮座している形となります。
先ほどより不動の滝や不動明王堂さらには不動明王の石像と続くのですが、滝のあるところには何故か「不動明王」に関わるものが付いてまわります。
これは基本的な形となり「滝めぐり」などをする中において不動明王の名が付くものを見ないほうが少ないぐらいです。
不動明王は奴僕三昧(ぬぼくざんまい)の誓いをたてており、信仰者を主人として忠実に使えて主人となる修行者のために下僕となってその修行を助けつつ修行の邪魔をする魔から守護してくれるとされています。
修験霊場の御瀧場にはよく不動明王がお祀りされていることがあるのですが、これらもその内のひとつだと思います。
そんな不動明王の石像を過ぎるとすぐに不動明王堂があるのですが、お堂の中に入ってお参りすることができます。
外見を見る限りは普通の建物に見えますが、お堂の中は少し変わった形で天井部分が巨石の一部になっています。
天井と壁の一部が巨石を利用して建てられているため、少し冷ややかな室内となります。
不動明王堂のすぐ横には不動の滝が流れており、室内の窓から不動の滝の姿が見れるようになっています。
また、建物の前にも鉄格子の付いた滝見のスペースが用意されおり、どちらからでも不動の滝の観賞をすることができます。
但し、草木が生い茂っているのが少し邪魔で、それほど優れた景色ではありません!
以上が基本的な奇絶峡の散策となるのですが、ほとんどの方はここまでで散策終了となります。
今回は断崖に刻まれる「磨崖三尊大石仏」を近くで観賞するところまで散策を続けますので、しばらくのあいだお付き合い下さい。
断崖に刻まれる「磨崖三尊大石仏」
磨崖三尊大石仏までの散策ルートは至って簡単なのですが、思ってた以上に体力を必要とする登山道を進むことになります。
先程は不動の滝があった2つ目の石橋を渡って階段を登って不動明王堂に向かいましたが、磨崖三尊大石仏に向かう場合は階段を登らず脇にある登山道を進んで行きます。
この散策ルートは2kmほど先にある高尾山山頂まで続く登山道になりまが、磨崖三尊大石仏の観賞ポイントまではこれより200mほど先となります。
200mほどなので最初は「余裕や!」なんて調子に乗って歩き始めましたが、歩き出してすぐに余裕やの言葉は撤回となります。
訪れて最初に大きな一枚岩に刻まれた磨崖三尊大石仏を渓谷沿いに併走する県道29号線から見た時のことを思い出すと「あんなところに~!」と思うほど山の上のほうに小さく見えていたのを思い出します。
200m足らずの登山道で近づくと言うことは、ほぼ直角に登り進めないと辿り着ける訳がありません!
かなり勾配がきつい登山道となるため、歩きなれていない管理人は数十歩ごとに足が止まります。
冷ややかな山の中にも関わらず汗が止まりません!
足元の状態も良くないことで、体力が見る見るうちに削り取られていきます。
息も切れぎれやっとの思いで200m歩ききって「磨崖三尊大石仏」を拝見しようとしますが、草木が生い茂っていることと少し距離があるのでよく見えません!
右左へ移動して全体がうまく見える位置を探して写真には撮り収めましたが、微妙な距離感となるところが少し残念です!
不動の滝の上方にある大きな一枚岩に刻まれた磨崖三尊大石仏は、堂本印象画伯の原画を基にした「阿弥陀三尊」となります。
中尊の「阿弥陀如来」は、高さが7.3mになっています。
右脇侍の「勢至菩薩」と左脇侍の「観音菩薩」は、共に高さは4.9mあり、これほど大きな磨崖仏が幅が22mで高さが16mある一枚岩に刻まれています。
見えにくく距離が少しあるとはいえ、そのあまりの大きさに圧倒されます。
県道29号線から見た時は木々が邪魔して右脇侍の勢至菩薩は完全に見えない状態でしたが、それも見れたことでその点は大満足となります。
時間的には10分ぐらいで行けますので、お時間があるようでしたら是非一度「磨崖三尊大石仏」を近くから観賞してみて下さい!
と、言ったところで奇絶峡の紅葉及び磨崖三尊大石仏の散策が全て終了となります。
奇絶峡は桜及び紅葉の名所となるのですが、紅葉に関しては辺り一帯が紅く色付くと言う紅葉ではなく滝見橋付近のみの紅葉の観賞となります。
但し、周りの景観とのコラボレーションした優れた景色となります。
一部分しかない紅葉の中で最高のフォトスポットを探すのが醍醐味となる名所であると思います。
紅葉以外の見どころもたくさんあり、訪れる方も多くも無ければ少なくも無い「穴場的な紅葉スポット!」となりますので「騒がしいのは苦手!」と言う方には最高の癒しの空間になるのは間違いございません!
その年の気温によって多少の前後はありますが、奇絶峡の紅葉の見頃は例年11月中旬~下旬頃までとなりますので、そのあたりを目安に訪れることをお勧めしておきます。
奇絶峡のアクセス及び駐車場情報!
【基本情報】
*基本情報はできる限り新しい情報を掲載することを心掛けていますが、すべての変化に対応できないのが現状となりますのでご了承ください。
「奇絶峡」
- 住所:〒646-0001和歌山県田辺市上秋津
- 電話:0739-26-9929・FAX:0739-22-9903(田辺市役所観光振興課)
- 時間:散策自由
- 観覧料:無料
- 定休日:年中無休
- 駐車場:無料(30~40台)
- アクセス:【公共交通機関】「JR紀勢本線」の「紀伊田辺駅」から「龍神バス(龍神線)虎が峰経由季楽里龍神行」に乗り「奇絶峡」の停留所で下車してすぐ(紀伊田辺駅から約20分)
【お車】「阪和自動車道」の「南紀田辺IC」を降りてすぐにある「田辺インター入口」の交差点を左折して「国道42号線」に入り少し先の「秋津町」の交差点を左折して「県道29号線」に入ったらあとは道なりに5.6kmほど走り進めた先の左手側が「奇絶峡の駐車場」です7.3km(約10分)
最後までお付き合い頂きまして、本当にありがとうございます。
奇絶峡の紅葉は和歌山県では名所となるのですが、それほど多くの方でごった返すことの無い「穴場的なスポット」となります。
紅葉以外にも見どころが点在しますので「どこか良い場所が無いかな~!」ってお探しのあなたは、是非一度訪れてみて下さい!
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